第9巻、染色。

染めには、先染めと後染めがあります。
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後染めは、生地を織り上げて反物を染める、反染め=オーバーダイだけです。
これは基本無地に染める方法です。一部ウール以外の糸を例えばポリエステルなどをストライプに入れて反染めにしてストライプを染め残すなどの生地が昔ありましたが、仕上がりが安定しないので、メンズではもうやってないでしょう。


先染めには、糸になった状態で染める糸染めトップ染め=霜降り=メランジがあります。
トップ染め=霜降り=メランジ
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糸染めはストライプやウィンドペイン、グレンチェック、ハウンドトゥーツなどの格子柄や、2色以上の違う色で構成されたシャークスキン、ダイヤゴナル、ヘリンボーンなどを作る時に使用します。
紺のたて糸を50本並べて1本白い糸を入れて、また50本紺の糸を並べて、また白い糸、それを生地の巾分続けて、縦糸(たていと)を並べる=整経(せいけい)して織機(おりき)にかけて、緯糸(よこいと)を打つ、そうするとストライプの生地ができます。
緯糸(よこいと)も50本紺の糸、1本白糸とすると格子ができます。
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この縦糸(たていと)を生地巾に整経して、緯糸(よこいと)と組み合わせた状態の生地のことを生機(きばた)と言います。


トップ染めは、先に述べたまだ糸になっていない原料を束ねた状態、篠=トップの状態で染めるものです。スラックスなどでよくグレーの様々な明るさのものを見かけると思いますが、あれです。
何となく混ざった色で、良く見ると白い毛が混ざっているような、あれです。他にもベージュ、グリーン、ブルーなど様々な色があります。
イメージとして、グレー染料の入った容器をかき混ぜて、そこに白い染料を少し入れると渦を巻きますよね。そこに糸になる前の束を入れると、グレーに染まったところと、白く染まったところ、中間の色に染まったところができますよね。その束を乾かして糸にはすると、なんか色の混ざった糸ができますよね。それです。
すみません、あれです、それですで。
やっと色の付いた糸が出ました。

ここで企画、仕入れを担当すると必ず聞く、ミニマムロットについて触れておきます。
ミニマムロット、正しくは生産ミニマムロットは、生地を注文する際の最低の発注反数のことを言います。ウールよりも合成繊維の方が一般的にはロットが大きいです。ミニマムロットには、生地を織るためのロット、糸を染めるためのロット、加工を施すためのロット、様々なロットがあります。「生産ミニマムロットを無視して、金額で補填するから」などと言うと、驚くような金額を提示される場合があります。
生地を織るためのミニマムロットは、一般的にはスーツ素材4反から、ジャケット素材2反からなどと言われていましたが、今はどうなんでしょう?ミニマムロットは、生産の最少ロットでもあり、素材メーカーの経済最少ロットでもあるので、単純な話でもない場合があります。
染めのミニマムロットで最も少ないのが、糸染めです。逆に霜降り=トップ染めは大きな発注数量が必要です。
霜降り=トップ染は、色の明るさ=トーンに大きな影響を与える場合が多いので、イメージしている色合い、明るさにこだわって追求すると何年もに渡る大きなリスクとなります。そこで生地メーカーはミニマムロットの小さな糸染めで対応しようとします。ここで利用されるのが先に述べた杢糸使いです。例えば、もう少しだけ明るいグレーを狙って、霜降りミディアムグレーに白の糸を巻く・・・上手くいきそうでしょ。サンプルを確認して、明るさの面では問題なく出来たとしましょう。「ではこれでお願いします。」と注文します。反物の入荷の前に原反カット見本を確認。工場にお願いして製品化。
倉庫で出来上がってきた製品を見て・・・「やっと出来上がった、この明るさのグレーにこだわって作ったんだよなぁ、どれどれ・・・アレッ?」何か所々に黒い線の塊が、そして黒い筋と白い筋が全体的に走っています。「何コレ?」原反カット見本をを見てみると、その見本にも同じ黒い塊と走りがあります。杢糸使いの最初のサンプルを見ても、黒い塊と走っています。
そうです。明るさ=トーンだけを気にして、杢糸使いのデメリットを理解していなかったのです。
当然です、ミディアムグレーの糸に白い糸を巻いたのですから、走りは出ます。黒い部分は「杢溜り」と言って、濃い色の部分が偶然に重なると出る現象です。
生地メーカーは悪くありません、あなたの要望に応えてくれようと提案してくれたのです。杢糸使いのデメリットを知らないあなたが悪いのです。
私は、プロには厳しいです。特にモノを作る立場や、買う立場の人に。

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